2025年3月6日木曜日

グラディエイター2

 グラジエータ2を観た

リドリースコットが好きで、ほぼ全作品を観ているが、御年87歳なので最後の作品になるかなと思いつつ、映画館に足を運んだ。

黒澤やヒッチコックの晩年の作品は物足りなさを感じたが、リドリースコットは、プロダクションやスタッフに恵まれているのか強いバイタリティーを感じる。

話を色々詰め込み過ぎで、途中で登場人物のよく分からなくなったり、話が飛躍しすぎやろというのもあったが、話を強引にねじ伏せていく力はすごいと思う。

主人公が、奴隷の剣闘士のリーダーになるが、実は敵対するローマ帝国の将軍の息子で、父がローマの国王に歯向かって、息子と父がコロセアムで一対一で戦うのは、韓国ドラマに似た強引さがある。

色々とボリュームがあって戦闘シーンもあるが、CGが多用過ぎてブラックホークダウンのような繊細さは無いように思う。

佳品



2025年2月27日木曜日

竹久夢二展 あべのハルカス美術館

あべのハルカスで竹久夢二を観に行った。

大正期でアールヌーボーの影響を受けた美人画がかというイメージがあったが、実際には本の装丁は秀逸で、絵葉書やポスターの人物画は、今風のヘタウマのイラストレターよりずいぶん才気ばしっているように思う。

閉館の1時間前に行ったので、あんまりよく観れなかった。期間中にもう一度足を運びたい。

作品保護のため、あまり写真を撮れる作品はなかったが、まあ仕方あるまい。






2025年2月13日木曜日

三島由紀夫生誕100年展

 駒場の日本近代文学館で、「三島由紀夫生誕100周年」の展覧会に行ってきた。



こじんまりした会場だが、土曜日の昼下がりで、そこそこ観客が入っていたように思う。

10代後半から30代後半にかけて、三島由紀夫の小説や随筆をたくさん読んでいたが、今回は入場料が安い(300円)のもあって、淡々とした展示物群であった。

小説家の展覧会の場合、どうしても自筆の原稿や愛用していたグッズ(今回は盾の会の訓練に参加した時の靴や制服、帽子などが展示されていた)が展示されていたが、映画化された作品もたくさんあるので、それのフィルモグラフィーみたいなのもあれば良かったのに思ったが、今回は「憂国」だけだった。(「潮騒」や「からっ風野郎」、」「午後の曳航」他にもたくさんあるはずだ)

特に豊饒の海の「天人五衰」の最後の「それも心々ですさかい」のセリフを読んで凄い空虚感を覚えたと同時に、三島が最後まで役者として演じきった印象を受けた。

横尾忠則の椿説弓張月のポスターを観ながら、60年代の熱気みたいな片鱗が感じられ、半世紀も前の事なので、大分浄化されていったのか、茶色く退色した原稿用紙を見てそう思った。

ちょっと物足りない感があり、図録も無いとの事で仕方がなかったが(入門本を読めば事足りるが)まあ、アットホームな展覧会だったように思う。

著名?な評論家なのか、学校の先生なのか、誰かわからないがずっと会場で皆に聞こえるような声で(他の人は静かに観ているのに)自説をずっと喋っている人がいて耳障りだった。

館内の職員との会話なのかも知れないが、別室でやればよいと思う。

2025年2月2日日曜日

ジャパン・アバンギャルド アングラ演劇ポスター展

 扇町ミュージアムキューブで、60~70年代のアングラ演劇ポスター展を観に行った。

この頃は幼稚園から高校生の頃で、もう5年ほど早く生まれていたらもう、少しタイムリーな体験ができたかも知れない。

今はもう面影はないが、西武百貨店が協賛しているポスターが多かったのが、懐かしかった。80年代から90年代のバブルがハジケル前において、「不思議大好き」などおしゃれなキャッチコピーというか感性に基づい

たマーケッティングをやっていたが、その萌芽を感じさせる。寺山修司や天井桟敷が好きで、書籍や短編映画も含めて一通りは目を通したと思うが、黒テントに関しては全く不案内でよく分からなかったポスターのデザイナーは重複しているのが分かった。

レプリカポスターが売っていたら欲しいなと思ったが、残念ながら売っていたなかった。

B4サイズ位のポスターの画集を売っていたが、ちょっと物足りないかも






2025年1月16日木曜日

正体 横浜流星 他 

 知り合いのお薦めで、観に行った。

以前、「あきらとアキラ」を観たときに上手い役者さんだなと思っていたが

今回も監督の演出の手腕にもよるが、横浜流星は中々骨太な演技を見せてくれた。

ほとんどテレビを観ないので、TVドラマや芸能界にも興味がないが、この役者さんは将来売れるなと思ったら、NHKの大河ドラマの主人公に抜擢されていた。

元々現実離れしたストーリーであるが、何とかリアリズムな演出で最後まで押し切っている。うまい

元々小説が原作になっている事もあり、サスペンス映画に仕上がっているが、脇役にも巧い役者さんを揃えており、上映時間は長かったが、冗長さも無く一気呵成にクライマックスに突入したと思う。


2025年1月9日木曜日

歌川国芳展

あんまり集中して浮世絵に興味を持った事が無いので、どんなものか興味半分で行ってみたが、中々に面白かった。

ほとんど未知の人だったが、フライヤーの骸骨の絵が気になり、コピーも良かったので、それに釣られて行ったのも有る。
オンラインチケットは、日時の指定は無かったが、実際に行ってみると、入口は入場制限をしていて、15分待ちほどだった(14時過ぎに行ったのも一因)
作品は、A4~B4サイズであまり大きくなく、精緻で構図やデッサン力が巧みなものがたくさんあり、歌舞伎などの役者絵は、写楽などと比べるとやや見劣りするかも知れないが、重い白いモチーフを使っているので、基本的に見飽きないものとなっている
作品が小さいのと、有料の案内のヘッドホンを使っている観客が多いので、作品の前から中々動かないので、館内は渋滞状態だった。
横尾忠則の60年代のシルクスクリーン(天井桟敷のポスターなど)の原型になる作品も沢山あり、160年ほど前の作品群になるが、とても見応えがあった。

猫を多頭飼いしていたそうだが、猫に対するデッサン力には感服する。
江戸時代の和猫ののびのびした生態が感じられて、好ましく思う。




2024年11月4日月曜日

TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

 各美術館のコレクション展だが、有名な作家の作品が出てきたり、未知の作家でとても感銘を受けたのが有ったりで、宝探し的、自分の審美眼を試すような展覧会かなと思う。

特に気になったのが、辻永の「椿と仔山羊」で絵のセンチメンタル、ロマンチックな色調の印象から女流画家とばかり思い込んでいたが、家に帰って調べたら戦後日展を牛耳った天皇みたいな存在だったと知ってビックリした。1917年の作品で100年以上前だが、旧さを全然感じさせないし、発色もキレイでアカデミックでありながら、今も通じるセンスを感じる。

他の作品も色々調べてみたが、若い時から帝展などに買い上げされていたので、有り余る才能が有ったのだろう。戦後は小粒なって面白くないが・・・

戦後に東郷青児や藤田嗣治など大家が、画壇の縄張り争い!?が有って興味がないので調べていないが、今はそんな世俗的な絡みも忘れられて、作品のみが評価されているように感じる。

個人的には、ロシア構成主義、ロシアアバンギャルドが好きで、久しぶりに素敵な版画に出会えた。エル・リシツキーの一連の「太陽の征服」で、1992年に美術館が購入になっている。下世話な感じだが幾ら位で購入したのか気になる。

この頃のロシアは、エイゼンシュタイン、マレーヴィチやプロコフィエフ、ショスタコービチなど、一気に優れた芸術家が生まれ、30年代にスターリンが台頭してからおかしくなったが、この頃の作品はディアギレフのロシアバレー団や、バウハウス、イタリア未来派など、いろんなモノと絡み合って面白い時代だったと思う(日本で大正時代後半のモボ・モガにも通じてくる)

科書に良くて出てくる古賀春江の「海」1929年を観れたのも良かった、破滅型の画家でこの作品の4年後に亡くなったが、この頃は模範的なシュールレアリスムで端正な筆運びであった。あまり大きくないがカッチリした作品だった。

この人も調べていったら色々あって川端康成などとも親交があったり、生きて来た時代の美術の潮流を上手く取り入れたりしているが、回顧展などで観てみないと何とも評価しずらいだろうなと思う。


古賀春江 《海》

小倉遊亀の戦前の端正で清潔感あふれる作品を観てホッとする。日本画の王道を行くような感じ。女性の裸体を描いているのに、女流画家だからか、エロチシズムが良い意味で感じられず、構図に溶け込んでいる。 

特に、今回はあまり旧い作品はないが、ここ100年ほどの国内外の作品が集められているので、今回の古賀の作品は一種の清涼剤になる。出来れば「浴女その二」も並べて展示して欲しかったが、途中で作品を入れ替えるみたいだ。

小倉遊亀 《浴女 その一》

最初の方に展示されていたバスキアだが、自分が大学生の頃に流行っていて
 まさに自分と同時代を生きていた画家だけに強いシンパシーがある。
 私より、6ヶ月ほど早く生まれて、28歳で薬物中毒で亡くなっている。
 キースへリングはエイズで31歳で亡くなったりで、いわゆるストリートアートや、ニューペインティング的なものを同時代に体験したのも今では青春時代の懐かしい思い出になった。
親交のあったウォーホールもバスキアより少し前に亡くなっているので、一時代が終わった感があるが、今となっては懐かしくややレトロ(年代を感じる)な様式で妙な安堵感で眺められたが、ここ感覚はどこから来るのだろうか?


ジャン=ミシェル・バスキア 無題





2024年11月2日土曜日

塩田千春展 中之島美術館

浅学にて、塩田千春を知らなかったが、知人が観に行きたいというので、一緒に行った。 最初は、立体の造形作家かと思ったが、実際にはパフォーマーに近いかなと思う。 最初に感じたのは、先天的な造形力のセンスの良さだった。  会場最初にあった大きな展示室を飾る蜘蛛の巣のような広がりの造形物は、素人目にどのような結び方、どのような固定の仕方、満遍なくテンションがとれた張り具合など確認している内に、建築家的な資質の人かなと思ったが、 職人さんや助手の手助けがあると思うが、とても洗練された造形物のように思う。舞台美術などを作る時に、合理的な工程を見つけたのだと思う。
初期のややアカデミック的なところから順番に観ていったが、エナメル(油絵具?)を全身に塗ってのパフォーマーは恐ろし過ぎるが、それだけ迫力はある。
20歳代の骨のオブジェは、ドイツでの生活から発想を得たものかと思うが、気持ち悪さみたいなものはあるが、豊かな才能の萌芽みたいなものを感じられる。
展示室に作者の生い立ちや作品紹介のインタビュー(ドキュメンタリー)みたいなビデオが15分ほどあってじっくり観ていたが、天才肌だと感じた。
現代美術でも、構図や技巧、知能、知識など頭で逡巡しながら描かれた作品があるが、どうしてもそれが吉にも凶にも出て、観ていてしんどい時・感心はするが感動しない時がある。塩田千春の作品にはそれが無い、気の向くままに創作しているが、伸び伸びしていてコスモポリタン(日本の風土を感じさせない)なイメージが強いので、海外にも受け入れやすいのではないかと思う。
最近の作者が癌にかかってからの、人体や内臓(がん細胞?)のオブジェなどを多数作っているが、「癌にうなされた夜の夢」のイメージの造形物は死神と思わせるほど不気味なものだが、そういったものがサラッと創れるのが単純にすごいなと思う。

掘り出しモノ満点の充実した個展であった。

2024年7月7日日曜日

村上隆 もののけ 京都

村上隆の作品は二十年近く前から気になっていたけど、生理的にどうも受け付けなくて、特に展覧会にも行こうとしなかった。

工房、デザイン事務所、印刷事務所、CGなどで大量生産的な印象があるので、ネットで調べてみたら有限会社カイカイキキで作品を作っているようであった。
モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動やウィーン工房に似た業態だと思う。
アニメキャラっぽいのが、今の時代の風潮を切り取ったもので、今まで関心はするけど感激はしない印象があった。2000年の初頭から海外でも知名度を上げ高く評価されていたが、天才的なプロデュースのセンスや経営力があると強く感じる。
今まで、わざわざ美術館迄はと思っていたが、京都でやることになっていたので、いつまでも食わず嫌いも行けないなと思い、クルマを駆けて観に行くことにした。



入口の壁画と仏像のようなオブジェ、ド迫力、外国の観光客が自撮りや記念撮影をしていた。涅槃の入り口のような印象(実際はもっと質素なものだが)
金剛力士像をモチーフにした像がある

かなり大きな立像、新興宗教の偶像みたい。10年たったら信仰の対象になりそうな迫力と完成度。100年たったら令和期の文化遺産になる可能性もある。


今回の展覧会は、ベースがキャラクターのイラストやオブジェではあるが、遊園地感覚で観に行くのとも違うし、ポケモンセンターにも行くのとは違う。芸術家の魂の吐露を確認するような場である。村上隆も還暦を超えて円熟味が増し、ますます創作意欲が増えたように思う。そして、「もののけ京都 」というテーマであるが、死が身近になって来ているように思う。


10年たったら、仏教寺院、新興宗教的な方向「大徳寺真珠庵」に飾られるような気がする。もののけ、暗い、死をイメージにしたもの、京都の歴史的なカルチャーと結びつく。













まだまだ仏教的な要素の絵は有った。
CGで作成してプリントしているので肉筆感はない。どんな風に金箔とか処理されているのか気になって目を凝らしてみたが、シルクスクリーンか顔料の印刷??


こちらからは、キャラクター風な作品




唯一エロチシズムを含んだ作品(多分)

個々の評価は避けるが、もちろんレベルは高いがCGで作っているので、手造り感は無い(ここでそれを求めるのは野暮であるが)工芸品的な扱い、希少価値云々より面白いモチーフがあれば、コレクターとして持っていたいという気はさせる。






村上隆ワールド全開のスリリングな展覧会であった
鑑賞後に妙な高揚感が有って、来てよかったと思う。






2024年2月20日火曜日

モネ展

 モネ展に行く。サロンに出品した頃の初期の作品から1925年の最晩年の作品まで丁寧に展示されていた。デッサン力を生かしながら、色彩やタッチが徐々に印象派になって行く過程がわかる。

現物を観ると筆運びなども詳しく観れて良かった。睡蓮の習作みたいな作品が沢山あったが、多分かなりの量のスケッチやデッサンを描いていた様に思う。








2023年12月10日日曜日

テート美術館展

 2012年のクリスマスのあ翌日に、年末年始にロンドンの王立戦争博物館に飛行機や戦車を観に行ったことが有って、その帰りにテムズ川近くの火力発電所を改装したモダンテートを訪れた。(当時から村上隆のグッズや英語の「オタク」についてイラスト本が売っていた)

とても素敵な場所だったので、今回はどのような作品が展示されているのか気になって、観に行った。

本家のテート美術館の所蔵品が中心で、現代美術が後半展示されているという構成である。


寓話的な絵画やロマン主義的なブレイクなどの作品から並んでいるが、イタリアやスペインのような宗教色の強い作品はなく、のちにターナーに繋がるような風光明媚な風景の空気感を切り取った作品が多い。


印刷物やネットでも体験出来るが、やはり本物を見ながら筆跡を辿りながら、画家の構想や逡巡を考えていくのも楽しみである(お弟子さんが描いた可能性も強いが)ターナーの作品をまとまってみることが出来たのは良かった。

印象派から現代にかけては、モネやカンディンスキーの佳品、イタリア未来派も飾ってあったが、本国にはもっとあるんだろうと思う。今回はちょっと物足りなかった。

ラファエロ前派は、この作品だけみたい、もっとこの辺も観てみたい

現代では、著作権の関係で写真が撮れなかったので、振り返って思い出すのは中々困難だが、浅学のため外国の作家はほとんど知らないが、草間弥生やハナヤ勘兵衛の作品が有ったのには感心した。



テートモダンほど尖った印象が無いので、ちょっと物足りなさを感じたかな。
ただ中庸なセンスの良い視点で選んだ、これはこれで良い展覧会だったように思う。